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| 地理情報システムの概要 |
はじめに
地理情報システム(GIS: Geographical Information Systems) は、次世代の最も重要 な社会基盤の一つといわれ、非常に重要な分野であり、いろいろな研究や、 標準化などの動きが近年極めて活発になってきた。 この分野の市場は、現在1兆円、将来予測では7兆円(2010年)ともいわれる。 その研究分野であるが、GIS と一口にいっても研究内容は非常に広い。 おおまかな分類をすると次のようになる。
各研究分野の状況
この節では、GISに関連した先に述べた、それぞれの分野に関してそれぞれどのような 研究がなされているかを紹介を行う。 2.1 モデリング、アルゴリズム2.1.1 計算幾何計算幾何学はその名の通り、幾何的な問題を算法的に行う学問分野である。 この分野は、GISのような地理的な問題だけでなく、 グラフィックスの分野やVLSIのCADの分野など様々な分野に応用がある。この分野はかなり成熟し、きわめてその研究内容も多岐にわたっている。 分野としては、大きくわけて、位相幾何、組み合わせ論などの分野と、計量幾何学的 な分野にわけることができる。前者では離散幾何的な性質を利用してアルゴリズムを 構成する、という方向、後者では、数理計画などとの融合を図る方向や、数値誤差の 解析などがその主な研究の方向となっている。 また、ここではわけて扱っているが、次の空間データベースとの関わりは 非常に深く、そちらとの関連のあるような研究も盛んである。 特に様々な高度な高速検索技術は計算幾何的な手法が不可欠となっている。 以下では、計算幾何がどのようなGISの各分野に応用されているかを述べて行きたい。 なお、以下で述べるいずれの分野においても上で述べた、位相的研究と数量的研究 は不可欠であることに注意されたい。 - 幾何的データ構造B-treeやk-d treeなど幾何的なデータ構造の研究が最も基本的かつさかんな研究対象 である。それ以外でも、様々な図形などの幾何構造をいかに表現するか、 そしてそれをいかに解析するか、というのが古くから研究されている。- 一般化(genelarization)、簡単化GIS ではデータを拡大、縮小などをすることが多く、それに関する、 簡単化や間引きといった研究が必要となる。 簡単なものだと、以下のようなものがある。
- デジタルマッピング、地図認識森林境界などの描画などに、Voronoi図を応用したり、といったことがなされている。 また、建物の線を認識するなどにも計算幾何の技術が応用されている。 また、デジタル地図は階層構造になっていることが多いが、その間での 整合性検証、あるいは2つの地図の変化の抽出なども問題である。 なお、これらで特に問題になるのは、実際の誤差などの解析である。- 地形図関連地形図を解析するのに三角形分割がよく使われるのを始めとして、地形図 関連でも計算幾何学の応用が多く存在する。 さかんな研究分野としては次のようなものがあげられる。
- 都市工学における解析Voronoi図などを用いて行政区や店の配置などを評価する、あるいは計画をたてる、 といった研究。2.1.2 空間データベース空間を扱っているようなデータベースのことを総称して空間データベースという。 しかし、一口に空間データベースといっても扱うものは非常に多岐に渡る。 また、研究の方向性も、データベースのモデリングや構築の方向と、データベース 解析の方向にわけることができる。
- モデリングデータベースのモデリングの分野は、古くからの研究があり、 それらの研究は、主に2つのレベルに分けることができる。 一つは、実装のモデルの研究で、実際の効率的なデータ構造などの 研究である。例えば、次のようなものがあげられる。
- 解析データベース解析の分野についても、古くから研究がある。 古くから、最近点探索などを始めとする 空間データベースの検索アルゴリズムなどの研究が さかんになされている。最近では特に高次元での研究も非常にさかんである。 また最近特にさかんな話として、データマイニングなどの話がある。 データマイニングの研究としては、一般的なものでは、様々な 要素による地図上のオブジェクトなどのクラスタリングや、 植生などの地形の特徴を引き出すようなものなどがある。2.2 最適化とシミュレーション数値地図情報などを用いてさまざまなシミュレーションを行うことが研究されている。 ここで最適化などをこちらの節にいれて、 前節のアルゴリズムとわけているのは、こちらがより実際問題に近い ものを扱う、という観点からである。(前節が実際問題から離れている、 というわけではなく、前節はより抽象的あるいは一般的な話が多い、ということである。)最適化技術最適化の技術もGISでは重要である。 施設の配置の問題や、車両の配送効率化などの問題といった問題がこれに含まれる。 これらの問題は、企業の近年のコスト削減要求とも合致し、非常に 研究のさかんな分野である。 近年では、そういった個々の最適化問題だけでなく、さまざまな段階の ものを組み合わせたようなサプライ・チェーン・マネージメントなども 重要視されるようになってきた。都市開発計画解析都市工学の一分野でもある。首都移転などのシミュレーションや、 道路計画の際の交通流シミュレーション、都市熱など環境シミュレーション などの問題がある。通信シミュレーション最近、移動体通信などが非常にさかんになってきている。 そのような移動体通信や、その他の電波通信などで問題になっている 問題の一つとして、電波伝播のシミュレーションの研究がある。 これは、空間情報を用いて、電波状況などをシミュレートする研究である。災害対策火山泥流や河川氾濫、土砂災害などのシミュレーションなどをもとにしたハザード マップ作成や避難所策定などの問題が、雲仙噴火や関西大震災後に きわめて脚光を浴びている。 さらには、次のシステムに属する話ではあるが、この技術をさらに応用して、 実際の計測システムなどと連携したような災害対策システム などの研究もさかんになされている。景観シミュレーション3次元の空間データを扱い、都市環境、建築物の内部・外部の景観、など をシミュレーションする分野である。 さらには、人の動きなどもシミュレートすることによって、駅の設計の支援 などを行う、などといったことを目指している研究もある。 また、単に地図の表現方法の一つとして、3D的な表示をする、といったことを 目指している研究も存在する。 この研究は、建築学や都市工学などの分野の研究者を中心にさかんに行われている。統計調査シミュレーションなどを行う前に、実際の環境などを調査する ことも多い。その際に、地理的情報を考慮したような標本抽出 などといった、GISに特化した統計の研究なども試みられている。2.3 画像処理GISは結果を大抵画像という形式で出力することが多く、画像処理技術や 画像認識技術が必要となることがきわめて多い。従って、そのような研究 が必要不可欠である。デジタルマッピング現在殆どの(数値)地図は写真測量から作られている。 従来は、2枚のオーバーラップしている航空写真を用いて立体画像を得て、 手動で紙に計測したものを記録、図化し、さらにこれをワークステーションなど に読み込んで編集、整理することで行っていた。これに対して、種々の自動化や、位相情報の誤りのチェック、などなどの研究が なされている。 特に、建物と道路の重なりのチェックなどの整合性検証の問題については さかんに研究され、実用化されている部分も多い。 しかし、これらは、まだまだ人手にたよるところが大きく、対象とする データが巨大であることも踏まえ、革新的な自動化が求められている。 また、これに関連して、地図出力のプロッタの動きのの最適化という、最適化 の有名な問題がある。このように測定装置、出力装置に関連した研究も わりと多いようである。 地図画像認識デジタルマッピングなどの技術で作成した紙地図から数値地図に欲しい対象 を抽出、計測する、という問題である。 地図記号、道路その他の自動判別から、 道路ネットワークや家屋などの抽出などが必要とされている。 ここで重要な問題の一つはデジタルマッピングの際にもあったが、 位相情報の誤りのチェックなどの整合性検証の問題である。画像データベース最近は衛星画像など大量のデータが得られるようになり、それらの管理、解析 なども非常に急務となってきている。特に、そういったものから 有意な情報を引き出すデータマイニング的な技術の研究は極めて重要である。 また、少し変わったものでは、ハッブル天体望遠鏡などの ニーズから天体のデータベース化が最近急ピッチで行われており、天体 画像などのデータベース化およびその解析の研究などもある。2.4 システムこの節では、GISの典型的な例となるような様々なシステムについて紹介する。 これらのシステムは、商用ベースのしかも開発的な 要素を多くもつため、大学より民間での研究・開発が多い。 研究としてはそれほど面白味があるわけではないが、GISといった時に、 一番引き合いに出されるのは、こういった大規模システムであることが多い。地図情報データベース地図とデータベースを連結するなどして便利を図ったような種々のシステムが 存在する。研究対象としてはそれほど面白いわけでもないが、実用的には きわめて多くの応用対象があり、商用ソフトも多数出ている。 簡単なものでは、単なる地名、最短路などの検索システムなど があげられる。 また、エリアマーケティングなどを はじめとする解析の機能をあわせたようなものも考えられ、 現在市販されている多くのGISソフトウェアはそういったものをベースに さまざまな機能を追加したものであることが多い。また、このようなシステムは、企業の顧客管理システムや タクシーの配車システム、消防、救急システム、 ナビゲーションシステムなどにも使われる。ただし、これらは さまざまな機器との連携が必要となってくることが多く、ソフトウェアだけ の問題ではなくなってくる。 特に、ナビゲーションシステムでは、VICS(Behicle Information Communication System) などの双方向移動体情報通信のシステムなどが注目されている。 施設管理システム電力、ガス、上下水道、電話、道路などの管理のシステム。 図面更新の効率化、施設計画の適正化、保安レベルの向上、 緊急時対応、他企業との情報交換、などを目的とする。 すでに様々なシステムが実用システムとして動いている。ユーザーインターフェースこのようなシステムに必要な研究としては、ユーザーインターフェースの 研究が極めて重要な分野をしめる。これは、いかに効率的に入出力、対話を行うか、という 点が主眼となっている。
周囲の状況など
3.1 数値地図情報GISなどの研究を行うにあたって、重要なものとして実際の数値データ の存在は非常に重要である。日本においては、 国土数値情報の整備は全国総合開発計画など国土に関する諸計画策定 や事業実施などを目的に1974年国土庁設置と同時に始められ、 現在では様々なデータが整備されてきた。その管轄は国土地理院である。 そのデータは主に地形など自然環境などに関するものと行政界、土地利用など社機環境に 関するものとに分けられる。それらには以下のようなものがある。
3.2 標準化ISO/TC211という標準化が進められており、その 目的は、地球上の位置と直接または間接に 関連付けられている対象物または現象に関する情報につ いての構造化された標準体系を確立することである。 これらの標準は、地理情報について、デ−タ管理のための 方法、ツ−ルおよびサ−ビス(定義と記述法を含む)や、 異なるユーザ−、システムおよび場所の間での数値的/ 電子的形態でのデ−タの取得、加工、解析、アクセス、表現および変換を規 定することを目指している。 さらにこれは、可能な限り情報技術とデ−タに関する適当な 標準とリンクし、また地理デ−タを利用する分野特有のアプリケ− ションの開発に枠組みを与えることを目指している。 なお、国内では、建設省国土地理院が中心になって作業している。 また、これとは別に、Open GIS という民間ベースの同様の標準化を目指している グループも存在する。
その他の情報
この分野に関係の深い日本の組織
この分野に関係の深い海外の組織
学会・会議
ジャーナル
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| Last modified 30 June 1998 |